2018/06/18

t天王星について② ~個人への影響と"覚醒"


前回の記事で書いたように、天王星はローカル性が高い土星の視点を超え、どこでも誰にでも通用する形――より俯瞰的で、より広い視点を持つ「普遍性」を追究していきます。

天王星は、山羊座(土星)の「土」の要素を水瓶座(天王星)の「風」の要素に散らしていく天体だからです。

しかし実際、私達が普段「限定された土星の範囲内・ルール内で」日々の生活を送っていることを考えると、トランジット(以下t)の天王星が個人に影響するときというのは、

  • いつまでも変わらないと信じていたもの
  • これまで何度も繰り返してきたパターン・マンネリ・停滞感
  • 自分自身が持つ慣れきった認識・固定概念
  • 自分自身へ課していた制約・制限

など、「土星的な概念・習慣」を「刷新させる」作用を持ちます。
それは土星の範囲内・ルール内からの「解放」でもあると言えますし、逆に土星的な「安定・継続」にとらわれている個人にとっては、痛みを伴う時期になるとも言えます。

Heinrich Fuger "Prometheus"
ギリシャ神話の例で言えば、アメリカの占星家リズ・グリーン氏(Liz Greene)は、人類に「火」を与えたプロメテウス(Prometheus)を天王星に例えています。

人類が火を使うことで、元々持っていた高い知性が開花し、文化や文明を発達させていったことを考えると、t天王星は、個人の「本来の力」「本来の自分」を"覚醒"させ、心理面・精神面で成長させていく要素があると言及しているのです。

では、具体的にどういった形で"個人の覚醒"が起こるのでしょうか。まずは出生図の状態を見ていきたいと思います。



Aさん
左図はAさん(男性)の出生図です。(内容含め、掲載許可を頂いております)

Aさんは元プロ・スポーツ選手の方です。
いわゆる「サラブレッド一家」に生まれ、かつてはご祖父様、お父様、ご親戚の方までも同じスポーツでプロとして活躍されていらっしゃったそうです。

Ascが蠍座。支配星の冥王星が10室に在しています。こういった方は、主に家系の関係で、重いプレッシャーや責任を背負わなければならない状況になりがちです。

5室の牡羊座土星がノー・アスペクトということもあり、抑制的な面が強調されたキャラクターとなりますが、自己防衛的な衝動から来る打たれ弱さ、自尊心を守るがゆえの他人への排他的な態度も同時に強調されてくることになります。

MCは獅子座。支配星の射手座太陽は、蠍座水星-海王星とコンジャンクション、天秤座木星-天王星火星-ドラゴン・テイルとセクスタイルを形成。
3室の水瓶座の月がトラインを形成していることもあり、礼儀正しく、明るく前向き。優しくてユーモアのある楽しい方でいらっしゃいます。
また、第一線でご活躍されていただけあって、体調面や精神面での自己コントロールに長けていらっしゃるようにも思います。

しかし11室天秤座に在するこれらの天体は、他者に意志を委ねてしまいがちな面と、強い自尊心――他者に迎合しない面との折り合いが葛藤になりやすく、細やかな神経の傷みやすさも際立ってきがちです。



引退時
左図はAさんが引退された日時の5重円です。
内円から、出生図/太陽回帰図/CPS/年齢HN図/引退日時 となります。

10代後半でデビューされ、大きな賞を取った後も、順調に活躍されてきました。
しかし年齢による結果の低迷などで、不本意な引退を余儀なくされたのです。

tノード軸が地平線上に重なり、ICのt海王星がn水星-海王星-太陽にスクエアを形成。
太陽回帰図のAscは出生図の太陽/月のミッドポイント(HN8)。そこに年齢HNの月-土星-冥王星が重なっています。

t天王星はノード軸含めた天秤座木星-天王星-火星とオポジションを形成することもあって、いわゆる「中年の危機」(40代前半)の時期に相当します。

スイスの心理学者ユング(Carl Gustav Jung)は、この「中年の危機」について、

  • 体力・気力の衰え
  • 価値観の変化
  • これまでの生き方への関心の消失

など、人生の前半に無視してきた、あるいはやり残した問題・義務・欲求が表出してきやすい時期であると定義づけています。
ユングの言葉を一部引用させて頂きます。

年を取ったとき、自分自身や世界などの両義性を知ることが極めて重要になってきます。
疑うことは知恵の始まりです。人生の価値を疑い始めることは極めて重要であり、そうして世界の錯綜から自らを解放することができるようになるのです。
若い人達は疑いの中で生きることができません。人生について深刻な疑いを持てば、世界に入っていけなくなるからです。
しかし、成熟した人は世界からもっと分離すべきなのです。
――James Hollis 「ミドル・パッセージ ~生きる意味の再発見」より

Aさんには指導者としての道も残されていましたが、条件が折り合わず「裏切られた」と感じ、全ての関係者との縁を切りました。しばらく休むことにしたのです。


別居時
数年後、t天王星がAさんのノー・アスペクトの土星に重なったとき(t冥王星とスクエア)、奥様から突然、離婚を言い渡されました。

引退後、仕事をせず遊びにのめり込み、毎日お酒を浴びるように飲んでいたのです。

太陽回帰図のAscに冥王星がコンジャンクション、n金星やSA海王星を巻き込んでいます。tノード軸のハーフ・リターンの時期でもありました。

話し合いの末、離婚は回避できましたが、奥様の意志は固く、別居という形になりました。
体調を崩した上に、長年可愛がっていたペットの犬が亡くなり、おまけにご自宅の電化製品まで揃って壊れてしまいました。

仕事を探し始めましたが、不採用続き。採用されても、「年下の先輩」と喧嘩をして退職を繰り返しました。

そんなとき、お嬢様が「お父さんが(プロの)選手じゃなくても、いつも応援してるよ」と言って、ネクタイをプレゼントしてくれたそうです。シナストリではAさんの土星にお嬢様の金星が重なっています。
全てを失う前に、この生活から脱却しなければ、という焦りの中での出来事でした。逆行していたt天王星が順行し、n土星と最後のコンジャンクションを形成していました。
Aさんは現在、新しいお仕事を続けながら、別居を解消され、ご家族と暮らしていらっしゃいます。



天王星の"環"
n土星にt天王星がアスペクトを形成する時期は、いわゆる「断捨離」の要素が強くなります。
「いつまでも変わらない」と思っていたものが変容していくのを目の当たりにせざるを得ない時期だからです。

これまで蓄積・継続されてきた中での不要なものを捨てざるを得ないのは、自分自身を精神的に成長させるための出来事でもあります。
それは自分自身の本質に気付かせてくれる、学びの多い出来事となり得るのですが、特にハード・アスペクトですと手痛い損失を伴いがちです。

プロのスポーツ選手という華やかな世界を去ったAさんのケースでも、このタイミングによって、新しい価値観と共に「第二の人生を取り戻した」と解釈することができます。




Bさん
左図はBさん(女性)の出生図です。(内容含め、掲載許可を頂いております)

仕事や人間関係を継続させることが難しく、閉塞感を感じた途端に「どうしようもなく逃げ出したくなり、関係をバッサリ切ってしまう」。
近年はその間隔がますます短く目まぐるしく、顕著になってきて、どう折り合いをつけたら良いのか分からない、といったご相談でした。

6室の魚座月を頂点とした射手座天王星-双子座キロン、ドラゴン・ヘッドとのTスクエア。

天王星は近くのものより遠くのものとつながろうとする天体です。
ですから、月が環境や人間関係に馴染んできたときほど、天王星の「距離・独立」といった象意の反動が大きく、月の情緒を断ち切り、突然離れていこうとする傾向が強くなりがちなのです。
また、こういった傾向は幼少時の環境が拍車をかけている面もありそうです。

蟹座太陽はノー・アスペクト。
しかし、太陽を頂点とした天王星-月によるトール・ハンマー(2辺のセスキコードレイトから形成される二等辺三角形)が形成されており、特に身内・仲間内に対して強い批判精神が顕わになりがちです。
それはBさんご自身に俯瞰的・客観的な視点が備わっていることの表れではあるのですが、逆に、その正義感によって後々Bさんご自身が周囲から追い込まれる状況、分離していかざるを得ない状況をつくりやすいとも言えます。



ミッドポイント表(HN8)
赤枠で囲まれたところに表示されているように、右図の表で太陽-月といった個人天体が天王星からの強い影響――環境の連続性を断ち切ろうとする衝動が強調されていることが分かります。

心優しく傷付きやすい方ですが、面倒なことを押し付けられるような役割を担いやすく、「大切にされていない」といった強い不満やストレスを抱えつつも、それを表に出しづらい面があるのです。

それは、キロン-天王星を軸とした土星-木星、木星-子午線を軸としたキロン-金星からなるブーメラン型YODが重なり、キロン-木星を底辺とした複合的なアルプス型が形成されていることにも表れています。
"自分の道"を模索するのに大変な時間と気力を要する傾向が強いのです。

10室の獅子座金星はAscの支配星。ブーメラン型YODの一角であり、天秤座冥王星・蠍座土星とスクエアを形成。
元々、他人に印象づけるような演出でもってコミュニケーションするのに長ける、魅力的な金星ですが、深く強く揺るぎない愛情や人間関係を求める面もあり、人に徹底的に尽くしきる要素も持ちます。

しかしガードが固い上に、抑制・制限が強く、天王星の影響も大きいために、「分離したい自分」と「人にとことん合わせていきたい自分」が混在し、ここでも葛藤と孤独を抱えがちです。

しかし同時に、Bさんご自身が排除してきた"傷"に対して自覚的になることで得られる成熟。知見・知恵。
それらを同じような"傷"を持つ人達に対して提供していくことへの適性・大きく発展していく可能性も感じられるのです。



2018/07/28 05:18 月蝕時
2018年7月、月蝕時の5重円です。
内円から、出生図/太陽回帰図/CPS/年齢HN/月蝕時 となります。

t土星とCPSノード軸-キロン、年齢HN冥王星が子午線軸に重なり、環境の大きな変わり目――仕切り直し、デビューといった象意を感じさせます。

牡牛座にイングレスしたt天王星はn金星とスクエアを形成。
月蝕はこのAscの支配星である10室獅子座金星の上で起こるのです。

金星という個人天体にt天王星の影響が及ぶ時期は、冒頭に書いたように"覚醒"作用――"ブレイク・スルー"といった象意が強く働きます。Bさんの場合、Ascの支配星で、ブーメランYODの一角ですからなおさらです。

つまり、Bさんの「これまでの葛藤を抱える金星」が「刷新」され、本来の輝きを取り戻したり、これまで繰り返してきたパターンを断ち、成長を促される出来事が起きたりする可能性があるということです。

「蝕」は良くも悪くも、そういった象意を加速させるようなご縁の扉を開きます。
太陽回帰図の火星-木星、CPS海王星-木星-MC、年齢HNのAsc-天王星などが関連し、仕事面や恋愛面、人間関係や人との関わり方において状況が実際に動いていき、具体的になってくるひとつの可能性も推察できるのです。

しかしBさんの場合、「天王星の衝動」とも言える分離傾向と常に折り合いをつけていかなければなりません。
Bさんにとってこのトランジットは、開かれた方へ向かいつつ、今後、本来の獅子座金星を如何なく発揮していくための「チャンス」とも言えます。
ひとつのことを長く続けていくために、いかに心地良い環境を整えるべく自ら行動できるかが、蝕の影響下にある半年間の課題となってくるのではと思います。



太陽系
天王星の公転周期は84年。
同じトランスサタニアンでも、冥王星や海王星に比べるとその重みは違ってきますが、それでも私達人間の寿命を考えると、一生に一度だけの機会となります。

鑑定でも、天王星牡牛座入りに向けて昨年秋頃から、活動宮最終度数付近~固定宮初期度数付近に天体を持つ方の離婚・別居・起業・独立・転職・退職・デビュー・引っ越し等のご相談が多かったです。

不思議なのは、程度の差はあれど、どのお客様も「このままの状態ではいずれ破綻し、立ち行かなくなる」ことを見越し、変化せざるを得ない状況を察知されていらっしゃることでした。
それは長い目――「俯瞰的・普遍的視点」で見たときに、より自分らしい自分、本当の自分を取り戻すための"予感"でもあるように思います。



t天王星がアスペクトする出生図の天体がどんなコンディションであるか、どのサイン・ハウスの影響を受けているのかなど考察することによって、それがどのような種類の変化を起こすのかが見えてきます。

その変化が自分自身にどのような意味をもたらすのか。また、その変化で何を学び、どのように今後に生かしていくのか。t天王星――もとい、占星術はその問いに良いヒントを与えてくれると思っています。

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