2017/03/31

水星-天王星のアスペクトについて


笑いとは、張り詰められていた予期が突如として無に変わることから起こる情緒である―― イマニュエル・カント

学生の頃、学校の図書館でレーザーディスク(古いですね)を観るのが好きでした。オペラやバレエ、オーケストラのディスクが並ぶ棚の中に何故か落語のディスクがありました。


「桂枝雀(かつら しじゃく)」。丸い輪郭に、大らかで柔和な雰囲気。くるくる変わる豊かな表情。
誇張した動作、巻き舌や様々な声色を駆使し、不思議な抑揚をつけて聞き取れないほどのスピードでしゃべるその高座をとてもおもしろく楽しく観たのです。

CDを買って、毎日のように聴いていた時期もありました。「代書」「寝床」「宿替え」「高津の富」などなど…何度聴いても本当におもしろくて笑ってしまうのです。
ただ聴き終えた後、何だか所在無さげな、とても寂しい、切ない、妙に荒涼とした感覚が余韻として残るのは何故なのかと思っていました。



1939/08/13 12:00 兵庫県神戸市
桂枝雀師匠の出生図です。出生時間不明のため12:00で設定しています。

図ではカイトを形成していますが、18:00以降の生まれだとカイトが崩れ、牡羊座土星-ノード軸を頂点とした獅子座冥王星-山羊座火星とのTスクエアに月が加わる可能性があります。

獅子座太陽-水星が牡牛座天王星とスクエア。
枝雀師匠の大きな特徴として、「笑いが起こる状況」に視点を定めて徹底的に研究し尽した、独自の理論が挙げられます。

それが「緊張の緩和理論」でした。冒頭のカントの言葉から発展させた、緊張が緩和されたときに笑いが生まれる、という理論です。


「笑い」を①悟りの笑い ②喜びの笑い ③一瞬の笑い の3段階に分け、③を積み重ねていくことで②や①の段階に移行できるという理論を提唱したのです。
枝雀師匠が追求していたのは③の笑いでした。③はさらに4つの種類に分類され、噺によって最も効果的に演じられるよう細かく使い分けていたそうです。落語家としては異例づくしの方なのです。



水星-天王星のアスペクトを持つ人は、直感力に優れ、斬新で冴えた知性を持ちます。人が思ってもみないところに着目し、客観的な視点で物事を見る能力に長けています。過去の記事でも書きましたが、文才にも恵まれ、作家にも多いアスペクトです。

ハードアスペクトですとその独創性は際立ち、批判精神が旺盛で、平凡であることを避けようとする傾向が強まります。
天王星は、土星の一般常識的とされる枠組みをはるかに超えて普遍的なものを求める天体ですから、普段の生活の中(土星)ではかなり変わった人だと認識されやすい面も出てきやすいです。
しかしもっと大きな視点――宇宙からの視点ではその「突飛」とされる考えの方が、いつでも、どこでも通用する、より普遍的なものとも言えます。

ただいくら普遍的だと言っても、普段の生活の中ではその鋭さから人との間に波風を立ててしまったり、妙に浮いてしまったりして生きづらさとなって出ることもあります。横並びを良しとする日本に住んでいるとなおさらその傾向が強まるのかもしれません。

また、神経の高揚、緊張が出ることも多く、向精神薬を飲んでいたり、不眠症で悩んでいたりする人も多い印象があります。
水星-天王星のアスペクト(特にハード)を持つ人が専門分野を持つと良いとよく言われるのはそのためです。その大きすぎる衝動を専門分野で使っていくと良い、ということなのです。



桂枝雀
さて、水星-天王星のスクエアを持つ枝雀師匠は、長い間うつ病に苦しめられていました。

若いとき(当時は小米という名でした)の枝雀師匠の落語は上方の落語家には珍しくエッジの効いた、インテリジェンスを感じる緻密で繊細なものだったそうです。声が小さすぎて注意されることもあったとか。

普段は陰気で、ほとんど話もせず、テレビも見ない。このあたりは出生時間不明の月の状態に関わってくるのでしょう。

結婚してからもそれは変わりませんでしたが、うつ病を発症したのを機に大きく意識を変えるのです。それは痛ましい決意でもありました。

「ずっと笑いの仮面をかぶり続ければ、いつかその仮面が自分の顔になる」、常に自分にそう言い聞かせ、サイン色紙には「萬時機嫌良く」と書きました。そうして、今までの落語スタイルを大きく変え、枝雀の名を襲名するのです。

獅子座太陽-水星らしい、誇張とも言えるオーバーアクションは一部から酷評されましたが、全て「緊張の緩和理論」に基づく緻密な計算に基づいたものでした。実際、高座のお客は常に満員で、どんなお客でも大爆笑させたそうです。こうして大人気落語家への階段を駆けのぼっていくのです。

メディアの出演に加えて、ショート落語の創作、英語落語を海外で披露する多忙の中でも、独自の「緊張の緩和理論」を発展させることを忘れませんでした。
物事を「陰と陽」「閉じと開き」で表現する「二極分類」を提唱し、それを実践するために旅行中でも何でも毎日、自分を追い込んで猛烈な稽古に励みました。



水星-天王星のスクエアに加え、土星-冥王星-火星のTスクエア(土星-冥王星世代の過去記事はこちらです)。
常にぎりぎりにまで張り詰めた知性と、高みを目指す壮絶な努力。枝雀師匠の理論や考え方、言動はまさに、これらのアスペクトの特徴を表していると言えます。

「人間、ボーッとせなあきまへんで。それに気ぃついたんで、このごろはボーッとするお稽古してまんねん」

「笑い笑い笑い笑い、笑いに徹して、その向こうに勝手に感じる人が、ある種、泣きを感じる。そうなればいいと思うんです」

「うちに倅がふたりいます。この間、『どう、お父さんの仮面、だいぶ身についてきたでしょう』って言うたら、下の倅の方から『うん、かなり良くなりましたね。でもチラチラ素顔が見えますよ』って言われまして。もう少し修行しなければならないと思ったんです」

「私の中に私を見てる枝雀がいて、これが私になかなかオーケーを出してくれなかったんです。それがこのごろはだいぶオーケーに近づいてきた。見てて下さい。もうじき自分の落語を完成させます」

うつ病が悪化した枝雀師匠は自殺をはかり、意識が回復することなく亡くなりました。

死後発見された「落語の快感構造」「こころ三層論」を含むノートやメモからは、自分の落語を聴くお客様に対する「笑い」そのものを追求した、深く高い理想を掲げた求道者としての姿が浮かび上がってきます。

余談ですが、私が学生の頃、枝雀師匠の「落語の向こう」に、「ある種の泣きを感じ」ていたのは、私の太陽/月のミッドポイントに、枝雀師匠の冥王星-土星-火星のTスクエアが重なっているからかもしれません。

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